ひとくち伝言 平成12年6 月(111号)





 「史跡めぐり」だの「歩け歩けの会」などの人々がよく、境内の石仏を拝観に来ます。そして、大勢の人から色々なことを尋ねられるわけです。
 「なんで百観音というのですか」とか、「全部で何体あるんですか」という質問は毎度のことですから、答え方も大体承知していて、西国・板東・秩父の由来からご説明しています。「いったいどうしてこういうものがあるのですか」と来れば、「それは『よっぽどのこと』があったんですね」とまず受けて、そこから成り立ちの説明を始めることにしています。でも時々、こちらが答えに窮するような質問をされることがありまして、そういうのを後で思い返してみると実に興味深いものがあるのです。
 案外困るのが「ここは古いんですか」という質問で、百観音の巡礼の歴史そのものは大変古いのですけれど、この寺の歴史というとなにしろ「明治寺」ですから、「三百年」などという嘘は言えないわけです。でも、訪ねてきた人の「さぞ古いんでしょうね」と言ってくれる気持ちは裏切りたくないし、「実は、そう古くもないんです」と言うのもちょっとくやしいし…、答えを探している僅かの間にいろいろな思いが脳裏を駆けめぐるのです。
 「いったいどこからこんなにたくさん集めて来たんですか…」。その人はまるで、コツコツと石仏を運び込んで、ここに並べたんだと思っていたようですが、こちらの応対を誤ると人聞きの悪いことになってしまいますから、少々ドキリとするわけであります。「たくさん並んでいる」イコール「よそから集めてきた」と解釈する人がいることを知りました。
 「ここの仏さんは何に効くんですか」。そうきかれて「えっとー…」と窮したのは、まさか漢方薬みたいに石のかけらを煎じて飲むことを考えているんじゃないだろうなという、防衛本能が先にたってしまったからなのです。その人は「厄除け」や「ぼけ封じ」というようなご利益を期待していたのでしょうか。その時弁慶少しもさわがず、「ここの観音さまは心に効きます」なんて言えたらよかったなあと思うわけです。他にもっと面白い答え方があるかも知れないと思うと、この問い方も捨てたものではない気がします。
 「ここは何の名所ですか」…。これは極めつけでしたね。たくさんの観音様のど真ん中でそう尋ねるほうもすごいと思いました。こちらは複雑な思いになるわけで。「ぼたんの名所」のようなうたい文句が欲しかったのでしょうか。よく見ていただければ、観音さまの微笑みが咲いているんですけどね。
 とにかく、世の中には様々な発想の仕方があることを知るのです。

百観音明治寺 住職 草野榮應







   ひとくち伝言板   


平成12年(仏紀2565年)6月の行事ご案内

6月 4日(日) 午前9時半より  写経の会

6月 6日(火) 午後1時半より  法話の会

6月17日(土) 午後1時より  百観音月例法要

6月14,28日(水) 午後6時半より 座りを味わう、坐禅の会




 ことしの
百観音献灯会

は、7月30日(日)午後6時より です。
  どうぞおたのしみに‥‥

 5月23日、深川めぐりに行きました。
 深川不動の太鼓がじんじん・清澄庭園の緑にはればれ…お不動様は正五九つまり正月五月九月の28日が、特に大切な縁日です。一年を三等分していることになりますね。桜が咲き、新緑の季節が来てうきうきしているうちに一年の三分の一が過ぎてしまっています。ここで心を締めなおす時だとお説教されてみると、なるほどと思います。激しい太鼓の乱れ打ちが骨の髄までしみました。
 涼亭は清澄庭園の美しい池の上に建てられた、贅沢なお座敷です。ここの予約がうまく取れたのが、幸運のもとでした。

 切手代感謝録:杉浦様、魚田様、野田様、長田様 有り難うございました。

 時ならぬにぎわいが、猿を囲んで…

 28日に百観音境内で猿まわしの公演が行われました。間際に決まったので伝言板にはお知らせできませんでした。地元商店街の宣伝によって、三、四百人の見物の人垣ができて、お猿はかなり驚いていたようですが、それでもちゃんと何とかするようにもってゆく村崎さんの力はさすがでした。

 緑濃い景色の中に子供やおとなの嬉しい顔々がたくさん並んでいる、いい写真ができました。人と動物が共感しあう世界がありました。この公演を持ちかけてくれたのは、大道芸塾のキャップ上島敏昭さんです。彼はジャーナリストであり、自らも色々な芸を身につけている人で、明治寺本堂の落慶の時には「南京玉すだれ」を演じてくれた方です。村崎さんの猿と一緒に、全国色々なところで公演をしてきましたが、「人が集まる場所を大切にしている土地はちゃんと栄えているということを実感している」という村崎さんの言葉を伝えてくれました。重みのある言葉です。




東京都中野区沼袋二ノニ八ノ二〇
百観音明治寺 草野榮應