ひとくち伝言 平成12年11 月(115号)



 仏教会の会合の後、数人の住職方が雑談して、法要中のハプニングや失敗談義に花が咲きました。そう言えば兼好法師の徒然草でも、しばしば仁和寺の法師の失敗談が出て来ます。仁和寺の関係の方々には大変お気の毒ですがそれもあの古典の魅力のひとつとなっているのは否めません。私たちも、あの親愛なる「仁和寺の法師」の仲間入りをしました。
 寺の本堂にはお経の時にカーンと鳴らすかねがありますね。あれを「馨子けいす 」と呼びますが、ある住職が法要のはじめに、それを何の気なしに鳴らしたのです。そしたら突然に猫が飛び出してきたので、大騒ぎになったという話がありました。まさか猫がその中で昼寝をしているとは誰も思わなかったでしょうが、猫の方も驚いたことでしょう。慌てる様が目に浮かびます。仏陀はインドの言葉 budh(目覚める、ハッと気付く) から来た言葉 buddha(ブッダ=目覚めた人) に由来しますから、猫が飛び起きたのはその原意に近いと言えば近いのですが、さて、あの猫は何を覚ったのでしょうか。
 ご承知のように法要では、参列の方が順番に出てきてお焼香をする場面があります。お経を読む僧侶の立場としては、最後のお焼香がいつ終わるかが気になります。終わりが早すぎてはいけないからです。それで、お施主の中には気をきかせて「お焼香が済みました」と、耳打ちをして下さる方がたまにあります。ある方は、最初は小声で知らせて下さったようですが、私はお経に集中して気付かなかったらしく、さらに私の耳元へ近づいて、ご親切にも怒鳴ってくださったことがありました。こっちは驚いたのなんの。飛び上がりそうになりました。いくらブッダを拝んでいても、お経を読んでいる本人が驚いていてはいけないんですけど。
 お焼香の作法を知らない若い人が、香炉の前に座ってモジモジしていることがあります。焼香する人の後ろ姿しか見えないので真似ができず、ハタと困っているのです。ある人は困った末に何をしたかというと、香炉に積もっていたお香をつまんで香盒に戻していたそうです。思いあぐねて、煙を掴んで鼻先へ持ってゆく人や、お香を食べてしまう人の話は前に書きましたが、次はどんなことをする人が出てくるのか、私はそれをひそかに楽しみにしています。香炉とお香があれば、お香を香炉の中にくべる以外のことを思いつくのはまず不可能だと我々は思うのに、その不可能なことをやってしまうところはすごいと思いませんか。時代の文化が閉塞した時に、思わぬ新しい発想を切り開くのはこういう人たちかも知れないと感心しています。

百観音明治寺 住職 草野榮應







   ひとくち伝言板   


平成12年(仏紀2565年)11月の行事ご案内

11月 5日(日) 午前9時より  写経の会

11月 6日(月) 午後1時半より  法話の会

11月17日(金) 午後1時より  百観音月例法要
           百観音大祭 護摩法要 並 境内石仏総供養

11月8,22日(水) 午後6時半より 月夜の雁を思う、坐禅の会

*満月の日は11月12日



 
ほととぎす
 
  一日ごろには、カエデやムクに微かな色付きが始まっています。山の上と違って都会では、今年の黄葉は案外早いかも知れないと思わせるような陽気ですね。ここ4〜5年は、いちょうの黄葉の最盛期は11月22日から24日ごろですが、昨年の24日の記録には「大分色づいたが、少し青いところもある」とありました。以前は、10月下旬には色づき始め、11月3日の文化の日には、あたり一面は黄金色だったと思うのですが…。一ヵ月もずれているということでしょうか。
 秋になると色彩も賑やかですが、境内のいちょうの下は人も賑やかです。近所の方が、「朝の3時半には、ぎんなんを拾いに人が来てるからね」と言ったとか。そう言った本人もそこに来ていたということでしょうか。

 切手代感謝録 森川由子様、中島秋則様、村井国郎様、魚田順子様、杉浦暁美様、野田瑠璃子様 ほか。  ありがとうございました。

 お釈迦様(仏陀)が菩提樹の下で何に目覚められたのか、まとまった形でお伝えしたことがなかったかも知れません。次回が今年最後、つまり今世紀最後になりますから、そのお話を私なりにまとめさせていただきたいと思います。



東京都中野区沼袋二ノニ八ノ二〇
百観音明治寺 草野榮應