ひとくち伝言 平成13年5月(120号)




 寺河俊海師の般若心経講話(高野山出版社)に出ている寓話です。
 むかしペルシャの国にゼミールという王様がおりました。彼は若くして王位に就いた時、国中の学者を集めて、詳しい人類の歴史を編纂せよと命じました。学者たちは、夜を日についで研究し、二十年かかって膨大な世界史をまとめました。彼らは五百巻の歴史書を駱駝十二頭にのせて持参しました。
 ところが若々しい青年であったゼミール王もその時すでに中年を過ぎ、その膨大な書物を読み尽くす意欲は失せておりました。王はもっと短く縮めてまいれと命じました。学者たちはさっそく改訂に掛かり、さらに二十年をかけて駱駝三頭の背に乗る長さにして、ふたたび王宮へ持参しました。
 その時には国王もまた年老い、もはやそれだけの歴史書も読めそうにはありませんでした。王はさらに短くせよと命じました。やむなく学者たちはまたもや十年の努力をはらって、象一頭に載るほどにつづめ、三たび国王のもとへ持参しました。しかし、すでにゼミール王の老いはなおも深まり、目も衰え、気力はさらに失せていたので、もっと短くせよ、というのでありました。気の毒に、生涯を人類史の編纂にささげた学者たちは、またもや老いに鞭打ち、なお五年を経てようやく一冊にまで縮めました。そして四たび国王 のもとへ持参したところ、果してゼミール王は臨終の床にありました。
 まさに息絶えんとする王は学者の姿を見て、「余は、ついに人類の歴史を知らずに死んでゆくのだ」と、大きなため息をもらしました。そのときひとりの老学者が枕もとへ進み出て、「それならば私がいま、たった三語で人類の歴史を申し上げましょう」と言上したのでありました。その言葉とは、『人間は生まれ、人間は苦しみ、人間は死にます。』でありました。
 それを聞いた王様が何と言ったかは分かりません。「なぜそれを最初に言わなかったのか」とでも王様が問い、学者が、「王様のおかげで、今ようやくそれが分かったのです」と答えたら、どんな具合だったでしょうか。
 仏教とは、まず最初に「人生は苦である」をスタートに置き、でもそれを乗り越える道があるはずだ、という歩みを始める生き方であるわけです。だから仏教はペシミズム(悲観主義)だと言われることがありますが、決してそうではなくて、たとえば雨雲の上には青空が広がっているではないかと信じる生き方なのです。もっとも、雨の日は花粉が飛ばないからうれしい、と言った人があって、はっとしました。何が価値であるかは、一概に決められません。それが本当の「空」ということなのでしょうか。

百観音明治寺 住職 草野榮應







   ひとくち伝言板   


平成13年(2001年・仏紀2566年)5月の行事ご案内


5月17日(木) 午後1時より  百観音法要
               〜 観音経読誦と教典講座 〜

5月9,23日(水) 午後6時半より 黙ってすわる、坐禅の会

4月29日(日)には、慈音会の総供養が行われました。



……取り急ぎお知らせ……
足利学校と鑁阿寺参拝(5月23日)

・写経の会で5月22日と決めましたが、足利学校はその日が休みと判明しました ので、勝手ながら翌日に変更させていただきました。どうぞご了承ください。
 風薫る5月に、緑豊かな北関東の古都、足利に遊びます。足利氏ゆかりの足利学 校跡は近年とてもよく整備され、美しい建物が復元されています。また、鑁阿寺( ばんなじ)は足利氏の屋敷があったところです。昼食は、古今の名士が憩うた老舗 巌華園で、古い庭を眺めながらゆっくりと会席料理をいただく予定です。交通機関 は貸切りのバスです。お誘い合わせて、ご参加ください。
・日時 5月23日(水) 午前8時出発予定 帰還時刻午後6時希望
・行程 東北自動車道→足利学校・鑁阿寺・巌華園・織姫神社など
・会費 8,000円
内訳 見学 400円、拝観とお供え1000円、昼食と飲み物6000円
    バス代金は寺より支出しますので、会費は人数に関係なし
・募集 先着20名 (5月17日締切り)
・出発地 明治寺の予定(場合によって別な場所になることもあります)
 4月8日 花まつりコンサート ご協賛感謝録
〜おかげ様で、本当にすばらしい演奏会になりました。東京の真ん中で、防音装置 もない建物でこんなことができるというのは誠に希有なことです。ご協賛いただい た分で、楽器運搬・調律、演奏謝礼、会場経費を支出させていただきました。
 また、幼い難民を考える会からも感謝のメッセージを頂いております。その感謝 を、ここにお取り次ぎさせていただきます。

田畑嘉子様、青柳妙子様、永易至文様、松丸芳子様、草野欣也様、魚田順子様、福嶋二三様、藤田美奈子様、飯田重平様、谷原光枝様、牧原佳子様、赤松由里様、清水わか子様・小石知香子様、笠木千束様、小山カズ様、高貴充輝様、徳弘多史様、光野裕子様、滝澤尚子様、宇治知也子様、松本善子様、牧原宏之様、太田裕子様、中間芳子様、森実佐太子様、匿名様、大久保三枝子様、西様・石橋様、
                          有り難うございました。

  披露宴での私のフォロー・スピーチ
「仏前での結婚式では、不殺生、不偸盗、不邪淫以下十の誓いを立てる儀式を行いましたが、非常に分かりやすい現代の言葉でとなえるのは、お二人にはさぞ照れくさかったろうと思います。でも、それを言わせている私の方はその何倍も照れくさい訳で、その気恥ずかしさに耐えるのが修行だと思って、戒師の役をおつとめいたしました。もっともその際、結婚は慈悲の道場と申し上げましたが、道場ということは未完成でいいんだということであります。互いに不完全だからこそ、共に補い合って、完成への長い道のりを歩き続けていただきたいと念じております。
 昨今は周囲に迷惑をかけまいとすることが美徳のように言われている時代ですが、お二人に限っては、もっと精一杯周囲の人に迷惑をかけるように。そして、周囲が『まったく』と言いながらも喜んで手を貸したくなるような、そんな結婚を築いてほしいと思います…」
 そう言ったら、肩の力が抜けて楽になったと、新郎新婦が言ってくれました。




東京都中野区沼袋二ノニ八ノ二〇
百観音明治寺 草野榮應