福壽海無量 謹賀新年
平成十年(戊寅)年元旦
平素のお力添えを感謝し、初春のご挨拶を申し上げます。
今年も、皆みな様のお門には限りなき福徳の光が射しこみますよう、至心にご祈念を申し上げます。当山におきましては、本堂の落慶を迎えてからはや十年、これまで恙なく今日に至りましたことを、あらためて感謝申し上げます。
米国留学中の高校生、伊藤典代さんの投書「大好きな日本、大丈夫ですか」が目にとまりました(十一月三十日付、朝日朝刊)。家から送られる新聞を読んでいると、日本の社会の中で起きていることには何も誇れるものがないし、日本文化の深い精神性や美しさが、人の心からどんどん失われているような気がする、「私が帰る頃には、日本は一体どうなっているだろうか」と心配ですという内容でした。
確かに新聞などの報道がすべてだとすれば、そう思えてくるのも無理ないことのように思えます。この声に、私ならどう答えられるだろうと思っているうちに、様々なことを考えてしまいました。
かえりみれば、昭和の経済成長の時代には三種の神器と言って、テレビ、洗濯機、冷蔵庫が、次にはカラーテレビ、クーラー、マイカーが、あこがれの的として輝いておりました。手に入れたものはすでに色あせ、そしてふと見ると、また新たに手に入れたいものがキラキラと輝いている、それの繰り返しが我々の豊かさの正体ではなかったかと思われます。学校ばかりではなく社会全体が、例えてみれば「君は国語はともかく、算数は得意だね」と言うよりは、「算数はいいけど、国語はもっと頑張りなさい」と言う雰囲気の中にあり、「ないもの求め」が突っ走る動機になって、これまでの日本をひたすら築いてきたように思います。
しかしそれも、バブル破壊の世になって、「鼻先のニンジン欲しさ」では馬車馬のがんばりもそういつまでもは続かないということが見えてきました。ここへ来てそろそろ別な豊かさを、ほんとうの力になる豊かさを見いだす時期に来ているのではないでしょうか。
法句経の中には、「おのれの 得るところに 軽んずるなかれ」という言葉があってハッといたしました。自らの手の内で色あせているものを、もう一度見直して輝かせなさいということであります。どの道端にも生えている「かえるっぱ」が咳止めやおできの薬となるように、足元に踏みつけながら見過ごしていたものの値打ちを、再び見直す智慧を持ちなさいという教えが、弘法大師の教えでもありました。
あの留学生の投書への答えにはなっておりませんけれども、日本の中には先人の築いたよいものがまだまだ沢山詰まっているのであって、今我々の目先にちらちらしているものを失った時に本当のそういうものが見えてくるとしたら、それこそ幸せなことではないかと、そんな思い方をしてみたいと思うこの頃でございます。
合掌敬具
百観音明治寺 住職 草野榮應
1998年の行事ご案内
平成十年(毎月十七日の月例法要は、午後一時から)
-
1月1日 (木) 修正会(元朝護摩供)
1月17日(土) 初観音大護摩供養 ならびに 開基 榮照法尼 忌
2月3日(火) 節分祭・星まつり(午後二時より)
2月15日 (日) 常楽会(釈尊命日・涅槃会)
2月17日 (火) 月例祭
3月17日(火) 春彼岸 大施餓鬼会
4月8日 (水) 降誕祭(花まつり) (予定 花まつりコンサート・チェンバロの夕べ)
4月17日 (金) 月例祭 ならびに 開山 密信大和上 忌
5月17日 (日) 月例祭
6月17日 (水) 月例祭(七月初旬より お盆の棚経)
7月17日(金) 盂蘭盆 大施餓鬼会
7月26日(日) 予定 百観音献灯会(夕方六時より)
8月17日 (月) 月例祭
9月17日(木) 秋彼岸 大施餓鬼会
10月17日 (土) 月例祭
11月17日(火) 月例大祭 大護摩供 ならびに 境内石仏総供養
12月17日 (木) 月例祭(納めの百観音法要)
その他の月例行事
(日時等変更になることもありますので、ご確認下さい。)
-
第一日曜日 午前九時より 写経の会(小筆一本お持ちになれば結構です)
-
*一月と二月のみ第二日曜日(一月十一日、二月八日)となります。*
毎月六日 午後一時半 法話の会(肩の凝らない法話のつどい)
第二・四水曜日 午後六時半 坐禅の会(静かに坐りを味わう坐禅です。)
毎月第二日曜日(要問合せ) 阿字観入門(英語版)
東京都中野区沼袋二ノニ八ノ二〇
百観音明治寺 草野榮應 3386-3937番