ひとくち伝言     平成10年3月(88号)





 百観音の節分にはもともと鬼が付きものだったそうで,ぬいぐるみを着た赤と青の鬼が繰り出し,豆を浴びて境内の奧のほら穴に逃げ込むまで,賑やかに追儺行事が繰り広げられたと言います。しかし厄を背負うのはいやだとか何とかで,だんだん鬼になってくれる人がいなくなり,近年は歳男が豆を撒くだけの節分になっておりました。いずれ青鬼赤鬼を復活したいと思っておりましたので,数年前に知り合いの若い喜劇役者に相談してみました。勿論,後で厄払いをしっかりしてあげるからと言って。お陰様でこのところ毎年鬼の出てくる,賑やかな節分が復活しております。
 鬼の出の場面には寸劇が挟るので,毎年その台本作りの相談をかけられます。かけ合いがあって姫様が鬼に意地悪をされる,すると住職が出てきて「こら,やめなさい」と叱る,しかしそれでも鬼は悪さをやめず,いよいよ「歳男のみなさん,助けてーっ」という声を合図に,一斉に豆撒きが始まるという思考であります。その最初の懲らしめの言葉をあれこれ考えて,ある案を思いつきました。『こら,やめないと,来年は呼んでやらないぞ!』というのはどうだいと言ったのです。この楽屋落ちを役者達は大層喜びましてね。でもそう言ってからふと思い当たりました。そうか,節分には鬼が出てくると言うけれども,鬼を呼んでいたのは自分たちの方だったのだということに。なにしろ,鬼あっての節分なのですから。
 思い出すのはウィーン郊外カーレンベルクの古い教会にある悪魔退治の壁画のことです。二昔前,欧州を貧乏旅行していた私は,美しい天使が悪魔を槍で 突き刺している図柄を眺めておりました。断末魔の叫びを上げる悪魔は醜悪であり,とどめを刺す天使の方は,まことに美しい顔だちをして,顔をしかめておりました。しかし私はこの徹底ぶりに何か「ついて行けないもの」を感じておりました。あそこまでやっつけちゃったら,身も蓋もないなあという感想でした。
 それに比べると,日本の豆撒きは何とも不徹底であります。息の根を止めるでもなく,鬼を追い払ってしまえばそれでおしまい。鬼がゴーグルをして来たらどうするなんていうことも考えない。これはまさにゲームであり,初めから私たちは鬼の存在を許しているかのようであります。そう,鬼と言えども,それは煩悩という私たちの心の一部なのですから,それを殺せるはずがないのです。…そんなことを考えていると,焼酎に「鬼ころし」という銘柄があるのを思い出しました。来年は鬼にあれ飲ませたろ。

(榮)












   ひとくち伝言板   

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平成10年3月の行事ご案内

3月 1日(日) 午前9時より  写経の会

3月 6日(金) 午後1時半より 法話の集い

*ご存じ,かねこざんの語り芸を予定しています

3月 17日(火) 午後1時より  百観音月例法要と法話
               ならびに 春彼岸・おせがき供養

3月11,25日(水) 午後6時半より 坐禅の会

3月  8日(日) 午後4時より  英語版・阿字観入門(第2日曜)




※今年も節分を賑やかに行うことができました。お力添え有り難うございます。
たくさんのお札のお申し込みや,撒き物等のご奉納をいただき,感謝いたします。なお古いお札をどうしようかと困っていらっしゃる方は,よその寺社のおふだでも結構ですから,百観音へお持ちください。きちんとお焚き上げいたします。

※4月8日(水)花まつり(終日)

*当日午後7時 花まつりコンサート/武久源造・「花の宴」
入場料3000円,前売り2500円
*1口1万円のご協賛を,よろしくお願いいたします。演奏家への謝礼,楽器運搬費用,会場設営等々を負担させていただきます。
 お寺で行うこの異色のコンサートも,こじんまりとして親しみやすい雰囲気が好評のようです。そして「幼い難民を考える会」に,なるべくたくさんの収入が行くようにと願っています。

※4月11日(土),12日(日)の両日,仏教情報センター15周年の記念行事
藤本義一さんの講演,内藤敏子さんのチター演奏など,おすすめです。
チケット2000円。限りがありますので,お早めに明治寺までどうぞ。


東京都中野区沼袋二ノニ八ノ二〇
百観音明治寺 草野榮應 3386-3937番