ひとくち伝言     平成10年10月(94号)





 英国の古い墓碑銘(エピタフ)の魅力に取りつかれた梅森元弘氏が、四十年にわたって収集した碑文を本にまとめました。(主婦の友社刊「死者のホンネ」)。十六世紀から十九世紀の作が中心ですが、時にはけなし言葉さえ混じるその碑文からは、活き活きとした人生が語られるのです。
「私もかつては/君のようだったが/今の私のように/君もなるだろう」こうした教訓タイプが典型的ですが、古めかしい墓碑からは想像もつかない文章も沢山あるのです。「パット・スティールここに眠る/それは真実/この人は誰か、何者かって?/それをお前が知って何になる」。「この墓地の中にエピーコート眠る/ここらか、そこいらだ/しかしどこなのか誰にもわからん/エピー本人立ち上がり/おれはここだと言うまでは」。
「その欠点にもかかわらず/家族と友垣に愛されし男なり」(私ならこんな言葉で送られたいと願うような、いい碑文です)。「この墓石は一里塚(マイルストーン)/なぜならこの下に/マイルがねむるから」(マイルさんの墓なのです)。「ここに眠るは/土に化したる/ミス・アラベラ・ヤング/五月の一日に/舌の動きを止めしものなり」(静かになってよかったという碑文は他にも多数あります)。「ここにチャード医師の遺骸眠る/彼はこの墓地の半分を死者で満たした」(平気で悪口を言うんですから、笑っちゃいますね)。「入ってきて/見まわして/気に入らないので/出ていった」(早世した子供を、こう言って送っています)。
 感心したのは、国王チャールズ二世が自分の墓碑銘を書けとロチェスター伯に命じて作らせた碑文です。「ここに眠るはマトン好きの王/彼の言を信じたる者なし/王は馬鹿なことを言わなかったし/賢いこともしなかった」。これを読んだ王は自ら次のように続けます。「死者が物言うならば、王はかく言わむ/その王冠に糺してみれば/王の行いとは大臣達のやったこと/王の言とは王が自ら言ったこと」。家臣はさぞかし主君を褒めたてるかと思いきや、涼しい顔をして「ぼんくらな王様だった」と書く、すると王が怒りもせずに、「そりゃ大臣がへぼだからね」とやり返す。しかし実際は、この王は波瀾万丈をくぐり抜け、才知にたけた王として有名な人でした。君主と家臣の間の篤い信頼が、芳しく香ってきます。
 読んでいるうちに、肩の力が抜けて、楽な気持ちになっておりました。ありのままの生き死にの姿がユーモアの中に肯定されていて、見も知らぬあの「先輩」たちに、限りない親しみを感じるのでありました。

(榮)












   ひとくち伝言板   

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平成10年10月の行事ご案内

10月4日(日)  午前9時より  写経の会
10月6日(火)  午後1時半より 法話のつどい
10月17日(土) 午後1時より  百観音月例法要と法話
10月14・28日(水) 午後6時半より  坐禅の会
10月11日(日) 午後4時より  英語版阿字観(第2日曜)



 目下咲いているのは、白萩、ほととぎす、紅白の水引草。中庭の真ん中で、鉢植えのハイビスカスが目立っています。鉢で到来した月下美人も咲きました。
  目下、境内は秋のよそおい、準備中。

 感謝録:切手代ご協力/杉浦様、山田紗水紅様、村井様、谷原様、魚田様。

 閑話休題、急に涼しくなりました。どうぞ風邪にご注意を。

応援PRのコーナー

チャリティーコンサート ピアノ協奏曲の夕べ

☆ 山本幸正
グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 作品16番
☆ 武藤聡子
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 二短調
☆土岐壽代
メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第2番 二短調 作品40番
☆船津祐子
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18番

指揮者:平井哲三郎
管弦楽:日本ニューフィルハーモニー管弦楽団

なかのZERO(大ホール)03-5340-5000
JR中央線・地下鉄東西線「中野駅」下車 南口から東へ徒歩7分
1998年10月13日(火)開場6:00PM 開演6:30PM
入場料:3,500円 (全自由席・税込)
後援:財団法人 読売光と愛の事業団
チケットぴあ 03-5237-9990
明治寺 03-3386-3937