「ほとけさまの物語散歩」(小松庸祐師著・朱鷺書房)をめくりながら再読を楽しんでおりました。その中に、「わらしべ長者」が宇治拾遺物語に収められている物語として、詳しく紹介されています。
これをあらためて読んでみて、実に興味深い物語であることに気付きました。筋はご存知のとおり、貧しさに進退極まった若者が長谷の観音さんに二十一日間お籠もりをして、「最初に手にしたものを手放さぬように」というお告げを受けます。大門を出る時につまづいて転ぶと、手に一本のわらしべをつかんでおりました。あぶが飛んで来たので捕らえてわらにつなぎ、おもちゃにしていると、それがみかんと交換になり、反物になり、馬になり、そして田畑になり、屋敷が付いてきます。一本のわらしべの縁から長者になるという、めでたしめでたしのお話であります。
ところが、物語はそれで終わっていないのです。長者となった若侍は、恵まれた幸福な暮らしを続けますが、だんだん「これでいいのだろうか」とうしろめたい気持ちがきざしてきて、とうとう長谷の観音さまへ再度お参りに行きます。夜通し礼拝していると「明け方に鐘をつかせてもらいなさい」とお告げがあります。自分でも驚くような大声で「はい、つかせてもらいます。」と答えたとたんに目がさめるのです。すると彼は元の貧しい若侍のままであり、あの夢のような長者の日々のすべては、やっぱり夢だったのでした。
彼は、鐘つき堂へ急ぎ、寺男に代わって鐘をつきました。鐘の音が明け方の空に響きわたり、そして若侍の体内に鳴りひびきました。すると、人生に対する新しい勇気が、彼の全身から沸々と湧き上がるのを覚えます。彼は寺男に深々と頭を下げ、意気揚々と寺を去ってゆくのでした。
これは人生に行き詰まった若者が、一度ひきこもり、やがて新しい自分を発見して、外界とのかかわりを回復してゆく物語です。とにかく最初に「つまづいて転ぶ」ということから始まるところに、何か大きな意味がありそうです。転んですべてを失った時に手にしたもの、それこそ、彼に最も必要なものだったのです。そして次に、ぶんぶん付きまとう「あぶ」を自分との繋がりのなかに受け入れていく。なかなか意味が深いのです。
長者になったところで終わればよかったのに、元の木阿弥に返ってしまうなんて残念な気もします。しかし若侍は長者の暮らしよりもっと大きなもの、これ以上何も失うもののない自分自身を発見したのでありました。
(榮)
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平成10年7・8月の行事ご案内
◆7月 5日(日) 午前9時より 写経の会
◆7月 6日(月) 午後1時半より 法話のつどい
(7月7日〜15日…お盆・棚経期間…)
◆7月 17日(金) 午後1時より 百観音月例法要ならびにお盆のお施餓鬼・塔婆供養
◆7月26日(日) 午後6時より 百観音献灯会(灯明供養・ガムラン・野外映画他)
◆8月17日(月) 1時より 百観音月例法要と法話
7月と8月の坐禅/阿字観はお休みです。
8月の写経の会/法話の会も夏休みです。
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※ 益子へ行った時の作品がようやくでき上がって来ました。多分全作品が無事に届いたはずです。写経の会の時にお分けしますから、どうぞお楽しみに。手作りの楽しさが、それぞれに感じられる逸品揃いです。同じものはふたつとないものばかりです。
7月3日には、益子の篠原さん(先日お世話になったご主人のお母様)と観音溝の皆 さんが、マイクロバスで百観音へお参りに来てくださることになっています。益子との縁が一層親しく思われます。
※ 目下、献灯会の準備とお盆の用意におおわらわです。今年は、夜店に一層の充実がみられそうです。「幼い難民の会」と「曹洞宗ボランティア会」が参加してくれて、カンボジャの人の手作り手芸品などが並ぶ予定です。
また、入り口ゲートを明るくするために、商店街の名前の入った提灯が並ぶようになります。せめて入り口だけは明るくしたいと思いますので…。
※ 都会の温暖化現象というものがあります。都会はコンクリートジャングルですから、じわじわ熱が蓄積し続けています。ある学者の計算によると、西暦2030年の7月末の晴れた日の午後6時に、都心の気温は45度に達しているだろうと計算されています。これを防ぐのに一番有効なのは、樹木を増やすことです。
そして、一本の大木は年間1500gの水を吸い上げ、蒸発させます。75万`カロ リーの熱を吸収し、12sの炭酸ガスを吸収し、6sの酸素を出してくれます。同じ効果を人工的に行おうとすれば、何十万円とかのコストと更なる環境負荷がかかります。百観音境内には大木が40本ほどありますので(つまりみんな大木になってしまったので…)、年間ざっと6万gの水を蒸発させ、3000万`カロリーの熱と、480sの炭酸ガスを吸収し、240sの酸素を出している計算になります。現在私は、同じことを人工的に行えばどれだけのコストになるのかを知りたいと思っています。
最近ダイオキシンの問題が起こった為、東京都は小型焼却炉を使用しないようにと通達しました。煙を出すのも遠慮しなさいということです。これだけ樹があれば、どうしても相当な量の枝葉を処分しなければなりません。ならばゴミとして出すほかないのですが、行政はゴミも減らしなさいと言い、その上ゴミ回収も有料化されてしまいました。でも、樹木は今年も気持ちよく繁っています。
緑の悩みもいよいよ、うっそうと繁ってきました。