ひとくち伝言 平成11年5 月(100号)





 再び永田和宏氏の紹介による短歌を肴にさせていただきます。
名にし負う霧の摩周湖この白き霧の真下に摩周湖はある
奥村耕作
 摩周湖というのは、ご存じの通り透明度が世界有数の湖で、独特の神秘的な水の色をたたえていることで有名ですね。同時に、霧に閉ざされていることが大変多いとも言われます。それで「霧の摩周湖」となるわけです。この言葉からは、こんなイメージが浮かんできそうですね。…立ちこめる深い霧の底に、静かに神秘的に横たわる瑠璃色の湖水…。そんな景色を見たいと期待して、霧の摩周湖へ行ったとします。しかし、霧が出ていたら摩周湖は見えるはずがない。これが事実の世界なのです。展望台から眺めても、ただただ白い霧しか見えないのであります。「霧の摩周湖」という何でもなさそうな言葉にトリックが忍び寄り、我々は見事にだまされてしまうその認識の落差を、作者は歌に詠んでいるのであります。
 この歌の面白さは、たった三十一文字の中に二度も摩周湖が出てくるのに、作者は一度も実際の摩周湖を見ていないというところですね。「この白き霧の真下に摩周湖はある」と、信じる他はない世界なのであります。
 ひょっとしたら、我々が知見する物事はすべて、この摩周湖を見る時と同じような見方をしているのではないかと、問いかけられているようにも思います。私たちは大抵、物を理解しようとする場合にはまず言葉に置き換えて把握します。時に言葉はひとり歩きを始め、気づかないうちに物事の本当の姿は観念に覆い隠されてしまっていることもある。霧に覆われた摩周湖は、そんなことを象徴しているのかも知れません。
 あるいは作者は、言葉にひそむトリックそのものを楽しんでいるのかも知れません。例えば「運命の赤い糸」なんて言います。結婚する二人は、生まれた時から見えない赤い糸で結ばれていたんだという美しい譬えですが、見えない物になんで赤い色がついているのか、考えたら矛盾ですよね。また、「消えたろうそくの火はどこへいっちゃうの?」だって、消えたら火じゃないでしょうと言いたくなります。「消えたろうそくの火」とくるから、目の前にはなくとも、どこか見えないところへ行っているのだという思いを導いてしまうのでしょう。このような、認識を超えた物事を指し示す言葉というのは興味が尽きないとも思うし、同時に、もっともっと慎重に慎重に扱わなければと思うのです。
 私もいつか、霧の摩周湖へ行ってみたいと思っています。
(榮)






   ひとくち伝言板   


平成11年(仏紀2564年)5月の行事ご案内

5月 6日(木) 午後1時半より  法話の会

5月 17日(月) 午後1時より  百観音月例法要 ならびに観音経読誦 と 法話

5月12,26日(水) 午後6時半より ゆったりすわる、坐禅の会




 5月19日(水) 新緑の塩船観音参拝と御岳山登拝

○ 新緑に萌える玉川上流の空気を吸いながら、塩船観音参拝と御岳登山を楽しみたいと思います。交通手段は気楽なマイクロ・バスで。ままごと屋の会席膳近くの吉川英治記念館(茶店紅梅苑)、清酒「澤乃井」の酒蔵見学も検討中。
・参加費用 約8000円(昼食代4500円、交通費3000円を含む)
   (20名参加の場合の想定費用です。多少の変更は了承ください)
・申込み  5月15日までに明治寺まで(3386−3937)
・出発   明治寺午前8時  ・解散 同寺 午後6時〜7時 
  〔詳細は、お申込みの際にお知らせいたします。〕


 花まつりコンサート とても良い演奏会でした。雨宮さんの詩の朗読、チェンバロのふたの開け閉め奏法という本邦発の試みなど、蓋を開けたら画期的な内容となりました。ご協賛くださった方のご芳名を記して、お礼申し上げます。
 田畑嘉子様、小山カズ様、福嶋二三様、大久保三枝子様、魚田順子様、大橋由子様、谷原光枝様、飯田重平様、滝澤尚子様、中村博幸様、宇治正敏様、牧原俊子様、松本善子様、菊田隆子様、赤松由里様、清水わか子様、小石知香子様、笠木千束様、白石博子様、西様石塚様、他。CYRからも、直接のご寄付を含めて約19万円の収入があった旨、感謝のご報告をいただきました。演奏謝礼・楽器諸費用等、無事済みました。ご支援のおかげです。有り難うございました。

 切手(郵送代)感謝録 松本重夫様、金子公俊様、魚田順子様、杉浦暁美様ありがとうございました。



東京都中野区沼袋二ノニ八ノ二〇
百観音明治寺 草野榮應