ひとくち伝言 平成11年11 月(105号)





 物事の名前や由来を尋ねると、本当にびっくりするものがあります。元来はこう だったのかと知ることの面白さを感じながら、お読みください。
 例えば「おせっかい」。これは「せっかい(切匙)」という道具の名前から来ています。しゃもじを縦半分に切ったような形をしていて、先端にできた角の部分ですり鉢の溝につまった物をこそぎ取る道具なのであります。つまり、その道具のように他人の心の奥ひだに分け入り、一々ほじくり出すことを、おせっかいと言ったわけです。比喩の見事さに感心しますね。
 「しゃもじ」。これは「杓子(しゃくし)」の「しゃ文字」という女房言葉で、室町頃の宮中の台所で使われたのが現代に残ったものです。内部でのみ通じる符丁のようなもので、その言葉の頭の一字に「もじ(文字)」を付けて婉曲に示す同類の言葉が他にもありました。「かもじ」(髪の「か」文字)「すもじ」(=鮨)、「おめもじ」(=お目にかかること)、「ひもじ」(「ひだるし=腹減った」のひ文字)から「ひもじい」が出ています。
 「しょっちゅう」というのは、「いつも、常に」という意味ですが、この語源にあたる言葉が、真言宗でよむ般若理趣経というお経の中にあります。「初中後善」、「初めも中程も終わりもすべてよろし」という一句がそれです。「ないしょ」という言葉は明らかに「内証」、つまり、仏のお覚りの、言葉に表せない深い味わいの世界を示す言葉に由来します。これが「ないしょのはなしはあのねのね…」となるのですから驚きますね。「とにかく」は「兎に角」と当て字されますが、仏教哲学の存在論の中で引用される「兎の角」は、世にあり得ない物として例示されます。つまり「兎に角」は、「たとえ兎に角があろうとなかろうと…」というのが本来なのでしょう。
 「イロハニホヘト…」が、仏教の基本的な教えを表した歌であり、しかも弘法大師の作と伝えられてきたことを知る若い人は、少ないのではないかと思います。「色は匂えど散りぬるを、我が世誰ぞ常ならむ。有為の奥山今日越えて、浅き夢見じ酔ひもせず(今を盛りと咲く花もいつか必ず散るように、世の中すべてのものは必ず朽ち果てる。変転して止まない無常の世界を今こそ越えゆきて、はかない夢や煩悩に惑うことなく、涅槃寂静の真実を求めてゆこう)」という、ありがたい歌なんであります。ところが日本の大工さんは、このイロハを柱や梁に割り振って建物を組み上げていきます。考えたらすごいことですね。大工さんは一々その意味を意識しないからいいんです、意識していたらとても家なんて建てていられないと思うわけです。
(榮)






   ひとくち伝言板   



平成11年(仏紀2564年)11月の行事ご案内

11月 6日(土) 午後1時より  法話の会

11月 7日(日) 午前9時より  もずを聞きながら…、写経の会

11月17日(日) 午後1時より  百観音大護摩法要、並びに境内石仏総供養

11月10,24日(水) 午後6時半より 坐禅の会(24日は十六夜です)
                  † 参考 新月は8日、満月は23日




 11月20日(土)午後5時より
・・・篠笛とものがたりのアンサンブル・・・
  『笛とことばのしらべ』

◎入場料3000円/百観音本堂にて(ちらし参照)

 チェンバロとガムランも結構ですが、時には日本のなつかしい余情にひたる機会もほしいと思い、企画しました。素朴な音色がしみじ冴えわたる夜となることを、願っています。


 切手代感謝録 杉浦暁美様、魚田順子様、藤田美奈子様、相原寛彰様、ほかありがとうございました。
 東京の緑地をかかえているところでは、今、大きな困難に直面しています。東京都や中野区の行政は、「煙を出すな、ごみを減らせ」と、言うようになりました。もちろん人が出すごみならばいくらでも工夫の仕方がありますが、樹木の出すごみ、つまり枯れ葉や枝は年々増える一方です。たくさんの樹木がお荷物になってきて、このままだと「要するに木を切ればいいじゃない」と言っているのと同じことになっています。
 行政も地域の人も、百観音の周辺の緑を見て、「緑がたくさんあっていいですね。緑を大切にしたいですね。」と、口をそろえて言ってくれます。しかし、環境をまもるつもりで「煙は出すな、ごみを減らせ」と言うことが、緑地という環境そのものを損なっていることに、なかなか気づいてくれません。
 (「葉っぱを肥料にしては?」と言われますが、そのための手間と場所と匂いの問題があり、イチョウの葉は腐らないときています。これだけの規模になると現実には非常に困難があります。)
 前にも書きましたが、一本の大木が一年間に吸い上げる水は1500リットル位だそうです。百観音にある40本の大木は毎日平均160リットルの水を蒸発させ、8万8千キロカロリーの熱を除いています。計算すると、炭酸ガスを毎日662リットル(2リットルのペットボトル331本分)吸収し、酸素を毎日420リットル(同ボトルで210本分)出してくれている計算になります。それだけの仕事を黙ってやってくれているものを、もっともっと評価してくれるような行政であってほしいと思います。

 戦争による空襲で境内は焼け野原になりました。防空壕に住み、この大庭を守った昌悦尼は、とにかく緑を復活したいと、懸命に草木を植え続けたと言っておりました。そういう努力が今の桜になり、けやきや楠の大木に繁って、境内を浄めてくれています。
 それをまもるのが、次の世代に課された仕事なのだと思って努めております。


東京都中野区沼袋二ノニ八ノ二〇
百観音明治寺 草野榮應